かつては、国民皆保険制度の確立、診療報酬の大幅な引上げ、高齢者の医療費無料制度など、普通に経営していれば安泰な時代から、現代では増え続ける社会保障費、少子・高齢“多死”社会の到来、高齢者人口の都道府県間の偏りが顕著になり、求められる医療サービスなども大きく変化しました。
2018年度の診療報酬改定の基礎資料にするため中央社会保険医療協議会が行った医療経済実態調査の結果によると、精神科などを除く一般病院(888病院)の「損益率」※は、2016年度には一施設あたりマイナス4.2%。これは、調査を始めた1967年度以降、2007年度のマイナス5.6%、2008年度のマイナス4.4%に次ぐ、過去3番目の赤字幅を示し、厳しい社会情勢の影響が色濃く出ていることが伺えます。
※本業(医療や介護サービスなど)で医療機関がどれだけ収益を確保できているかを示す値。マイナスは赤字を示す。
こうした厳しい社会情勢を鑑み、国は、あるべき医療のあり方を根本的に見直すため、現在、団塊の世代の全員が75歳以上になる2025年を想定した「地域包括ケアシステム」の整備と、その一環としての「地域医療構想」の実現を目指しています。
弊社主催の講演会に登壇いただいた病院理事長の医師の方も、近年のAI(人工知能)の急速な進歩と普及で近い将来、診療業務の多くがAIへと代わる強い危機感と、一方、心の病は人間(医師)でないと対応が難しいと感じ、内科専門から精神科医として活躍の場を広げていらっしゃり、時代の急激な変化を感じ柔軟な方針転換の動きもあります。
改めて自らの強みや本質を見直し、市場情勢を予測しつつ、医療ニーズを捉えてサービスを提供する必要性が更に高まると言えるでしょう。
これまで医業の世界では、「経営」というと「金儲け」を連想する傾向が強く、拒否すべきものという風潮がありました。しかしながら医業もコストがかかり、その大部分が公的保険料や税金で賄われている以上、効率性や透明性が求められます。医業をめぐる環境が激変するなか、地域住民の医療ニーズに応え、医業を安定して継続していくには「医療の質の向上」とともに、「経営の効率化」が欠かせません。
経営者でもある医師や薬剤師の皆さんはもともと優秀で理解も早く、ご自身で経営の課題を解決しようとする傾向がありますが、日々の治療など「医療」を担いながら「経営」にも目配りするのは、非常に負担が重いと思われます。
今や診療報酬の頭打ち、患者数減少、競合増加、人材確保の難しさに直面しており、経営の重要性が高まってきたことに気づいている方も増えています。そこで今後、「経営」については外部のプロフェッショナルの力を活用し、ご自身は本来の責務である「医療」に集中するケースが増えていくのではないでしょうか。現代の医療はチームで提供していますから、経営についてもチームで対応するという発想をとることは自然な流れだと思います。
「医療」と「経営」を分離するといっても、いろいろなやり方がありますし、程度もさまざまです。まずはこれまで医療に携わってきた志を再確認しつつ、今の時代の環境に適応していくにはどうすればいいのかを考えてみてはいかがでしょうか。
株式会社CBホールディングス
代表取締役社長
鈴木尚之
成功事例を含む、
「医経分離」による経営効率最大化の手法、
医療機関の清算・廃業回避対策をご紹介した一冊
医業経営力
─ 一段上を目指す拡大戦略から悔いのない継承まで ─
著者:鈴木尚之
(株式会社CBホールディングス 代表取締役社長)
発売:2019年4月15日(月)
定価:1,500円+税
頁数:198頁
出版社:幻冬舎メディアコンサルティング
札幌での創業から現在では全国に拠点を展開。地域密着が重要となる医療・介護・福祉業界だからこそ、お客様との会話を心掛けスピーディに対応しています。
“人の採用”をはじめとする経営課題について、全国のお客様に真摯に対応してきた年に渡る実績から、より細かな情報網と関係性を築いております。
多岐に渡るニーズにお応えしてきたノウハウの蓄積から展開・発展させた様々なサービスを、グループでご提供することで一貫した課題解決が可能です。
・開業支援事業
・薬局M&A仲介事業
・宣伝広報支援事業
・事業開発・企画支援事業
・地域包括ケアシステム構築支援事業
・医療・介護M&A仲介事業
・医療機関・福祉施設に対する経営支援事業